2019年1月25日金曜日

<episode 4>業務提携によって実現したいこと

<episode 3>はこちら

再び、株式会社ウェブインパクト(以下、WI)取締役ファウンダーの高柳です。
レガシー企業と協力関係を構築することを考えつつ、なかなか具体的な案が思いつかずにいた私は、あるとき講義の合間に立教大学のチャペルで考え事をしていました。
私はクリスチャンではないのですが、静かなチャペルはひとりでじっくりと考えをまとめるのにぴったりの場所です。そのため、学生時代もそうでしたが、大学で教鞭をとりはじめてからも空いた時間があると、ときどき訪れています。
あれこれと思いを巡らせていると、ふと旧友である澤田の顔が思い浮かびました。

彼が代表取締役を務める株式会社フジサワ・コーポレーション(以下、FC)は、70年の歴史を持ち、素晴らしいエンジニアリングリソースをたくさん持っています。しかも、澤田自身もITの知識と経験が豊富です。何よりも前述の通り、お互いのことをよく理解しています。
これまで意識していませんでしたが、改めて考えてみると、一緒に仕事をしていくのにこれ以上ないほど最高の相手なのです。そもそも20数年前は、このチャペルから数十歩のところにある2号館で一緒に事業をスタートした訳ですから。
とはいえ、いくら私が一緒にやろうと言っても、澤田が承諾してくれなくては意味がありません。そこで、私はそのままチャペルを出ると、大学からほど近い彼の会社を訪れ「一緒にやっていきますかね。」と言ってみました。
すると澤田はこちらが拍子抜けするほどあっさりと、
「そうですね、いいと思います。」と答えてくれたのです。

撮影:澤田 剛治

こうして、ここ数年頭を悩ませてきたレガシー企業とどのように協力していくかという問題に終止符が打たれました。
なぜ意思の疎通が一瞬で完了したかと言えば、つまり、レガシー企業のIT化が日本にとっての残された「大事」であるという事は、この数十年間ITを理解してきた者にとっては火を見るより明らかだったからです。今後の事業展開の話も、複雑な話は不要で、主語と述語を並べるだけで、お互い理解が可能です。そう言った意味に置いても、WIとFCの業務提携は両社にメリットがあり、それぞれが抱えていた課題は解消するはずです。そして、今回の提携は双方の会社だけの問題解決に留まらず、最終的には、新たな人財を育成しながら日本のとても元気でユニークなレガシー企業のIT化を促すお手伝いもできるのです。
私と澤田の間では、すでに多くの新たな事業展開の計画があります。以下に、その例を挙げてみたいと思います。
  • 愛知県豊橋市への「ITドミトリー」の設立
これは、FCの不動産開発ノウハウと弊社のIT人材育成ノウハウ、ラボを融合させる試みです。弊社豊橋コアをこの「ITドミトリー」と統合したいと考えています。
シェアオフィスやシェアハウスなどに代表される「シェアリングエコノミー系ビジネス」とITとは特に相性のいい関係です。私たちは、FCの不動産開発ノウハウにWIの高度なITを化学反応させることで、不動産開発×ITを提案していこうと考えています。
もともと弊社は、IT人財の育成に関心を抱き、豊橋技術科学大学などと連携して研究開発してきました。また、澤田は「シーナと一平」というゲストハウスを運営するシーナタウン社の取締役も兼務しているため、私たちのスペシャリティーからしてITドミトリーは極めて親和性が高いビジネスです。ドミトリーを設立することにより、新たなIT人財の育成に努めたいと考えています。
  • 日本におけるサイン・ディスプレイ分野へのIT対応
もともとサイン・ディスプレイ制作を手がけてきたFCがマーケットの獲得と設置、施行、企画を受け持ち、WIがソフトウェア開発およびクラウドとの接続を担当する予定です。両社が役割分担することで、日本におけるサイン・ディスプレイ分野のIT対応と市場の活性化に貢献します。
  • UI/UXの研究及び実装
FCの既存顧客もWIの既存顧客もアプリやウェブのみならず、実際の店舗などの導線やIT接点について悩みを抱えています。しかし、対応できるベンダーが少ないのが現状です。
WIは「UI/UX制作部」という独立した部署を持っています。ここでFCのDTPデザイナーをさらに教育強化することで、旺盛なUI/UXの評価、提案、改修、対応業務のニーズに応えてきます。
  • プロフェッショナルとしての職人を尊敬する会社に
FCは71年間、様々な職人たちと仕事をしてきた会社です。3代に渡り「職人を育成するのには時間がかかり、熟練した技を持つ人財は非常に貴重である」という考えを引き継いできました。職人の重要性をよく理解しているのです。
弊社もソフトウェアエンジニアも職人だと思っており、FCの考えに共感しています。2018年に創業25年を迎えた弊社は、今後100年続く会社を目指すべく、FCの哲学を共有し、共に歩んでいきたいと考えています。

今回の提携は、会社のみならず私自身にも多大な影響をもたらすでしょう。
今後、WIの経営は澤田に任せることになります。その分私は、日本のIT化を進めるための実務に力を入れていきます。最近では、大学の教員として学生に向けての教育や研究はもちろんですが、企業に対するアドバイザーとしての活動も日に日に増えています。企業の方には、しっかりと「IT前提経営®」をお伝えしご理解いただき、更に実践に繋げていこうと努力しています。

ITの世界では、新しいことを始めるハードルは高くありません。どういう意味かというと、土地を買って工場を建設する、というようなことがないため、とりあえずやってみて、ユーザーの反応を見て作り直す、という「トライ・アンド・エラー」を繰り返すうちに磨きがかかっていきます。レガシー企業がウォーターフォール型の意思決定に時間をかけている間に、われわれのようなアジャイル型は目的に向かって突き進めるため、その差はどんどん大きくなってしまうのです。
このスピード感とアジャイル感をレガシー企業こそ体験して頂きたいのです。私はそのための助言を様々なポジションから注力し、少しでも日本のITの導入に貢献したいと考えています。
今の私がソフトウェアエンジニアリング企業を経営したり、大学で教えたり研究したりすることができているのは、学生時代に指導してくださった先生方のおかげです。私の当時の指導教授と、澤田の当時の指導教授は、現在でもWIの株主でもあり、今でも応援してくださっています。
先生方が私たちを導いてくださったように、これからは私たちが頑張って後進を育てていかなくてはなりません。それが、次の20年に私たちに課せられた課題なのではないかと考えています。

私と澤田が最初に立教大学池袋キャンパスの2号館で立ち上げたサーバー名はweberだったという話は前述の通りですが、その社会学者、マックス・ウェーバーの名著『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』には「天職」という概念が出てきます。これはもともとドイツ語の「Beruf」であり、英語では「Calling」と訳されます。古くは「天職」の観念はルターに由来しますが、私たちの世代にとっては「Calling」という英訳が一番理解しやすいように、神から与えられた職業(天職)を世俗の中で地道に遂行することです。まさに次の20年がこれに当たると思っています。

WIとFCが資本業務提携することで、私たちはよりこの課題に取り組みやすい環境を作れるようになりました。これまで以上に尽力して参る所存ですので、引き続き何卒よろしくお願いいたします。