2019年1月12日土曜日

<episode 2>レガシー企業のITを取り巻く問題点

<episode 1>はこちら

株式会社ウェブインパクト取締役ファウンダーの高柳寛樹です。
大学時代に株式会社ウェブハット・コミュニケーションズを立ち上げた私は、大学院修了後も引き続きこの会社の経営に取り組んできました。

企業に就職した澤田に代わり経営に合流したのが、同じゼミ出身の前田です。彼はドイツ系大手のソフトウェア会社で働いていましたが、私の事業に興味を持ってくれたのです。この時期、「EZ-Shift(当時のサービス名:JobCommunicator)」というシフトを管理するクラウドサービスで、 現在も弊社の主力となっているサービスのリリースが続きました。前田は今の株式会社ウェブインパクト(以下、WI)の礎を作った時期を支えた一人です。
立教大学 池袋キャンパス内(撮影:澤田 剛治)

経営に携わるなかで、多くの方と知り合いました。なかでもサイバースペース・ジャパン株式会社の代表取締役(後にウェブインパクト代表取締役会長に就任)であった、細江治己氏との出会いはとても大きいものでした。
細江氏と知り合ったのは私と澤田がまだ学生だった頃です。私たちが起業したことを知った立教学院の職員の方に、「学校の大先輩に、インターネットベンチャーに携わっている方がいるから会ってみてはどうか」と紹介頂いたのがきっかけです。
細江氏は、私の母と同じ年でした。私や澤田と小・中学校が一緒ということもあり、とても丁寧に色々なことを教えてくれました。その後、時には増資を引き受けて頂くなど大変お世話になりました。
そんな縁から、2006年にサイバースペース・ジャパン株式会社と株式会社ウェブハット・コミュニケーションズは合併し、現在の株式会社ウェブインパクトとなり現在に至ります。

さて、ここまでお話したとおり、私はインターネットの黎明期から現在に至るまでインターネットに関する事業と研究に携わってきました。
この20年あまり、ITの進化はめざましく、それに伴い時代も大きく変わってきました。そんな中で、大きな問題だと感じていることがあります。それは、日本の多くの企業がインターネットを代表する「オープンソース」の精神に順応できなかったのではないかということです。その傾向は、いわゆるレガシー事業を続けてきた会社に顕著に現れているように思います。
その結果として、これらの会社は社内にIT人財が十分にいないため、外部のシステムベンダーに外注してきました。これだと社内にITに関する知識と知恵、そして経験が蓄積されないので、次々と現れる新しいテクノロジーに対応できません。
もちろん、利益が十分にある大企業であればIT部門にいくらでも費用をかけられるかもしれません。しかし、日本全国で約380万社(平成26年度中小企業庁発表から)あると言われている、中小企業はこの点に置いて難しい状況に置かれているのが現状です。
長年ITに携わる者の実感として、これらの中小企業がうまくITをツールとして使いこなせないと、日本は次のステップにいかないのではないかと強い危機感を抱いています。
私はここ数年「IT前提経営®」という概念を提唱しています。簡単に説明すると、現代は経済活動すべてにおいてITがなくては成り立たなくなっているということです。たとえば、宣伝するためにウェブサイトを作る、支払いのために、オサイフケータイやクレジットカードを使えるようにするという具合にです。どんな会社を経営する際も、この前提を忘れてはならないというのが「IT前提経営®」です。
そしてそれを実現するためには、あえてIT化が進まないレガシーの企業と組み、主に約380万社ある中小企業の本質的なIT化に取り組もうと決意しました。
また、レガシー企業との提携は、WIにもメリットがあります。まず挙げられるのは財務強化の点です。弊社は、新しい技術開発にも積極的に取り組んで来ています。しかし、技術開発には膨大な時間と労力がかかります。人財育成も必要になってくるため、われわれベンチャー企業の限られた資金でやり繰りするのは不可能に近いのです。この点に於いても株式会社フジサワ・コーポレーション(以下、FC)との資本提携により、これまで以上に積極的に開発に取り組むことができるでしょう。
またこの資本提携を機に、子会社に株式会社ウェブインパクトR&Dを設置します。ここでは、私たちが今まで豊橋市や秋田県で取り組んできた産学官連携を中心にした研究開発を中心に取り組んで参ります。例えば、JR豊橋駅では数年前からデジタルサイネージ(大型タッチディスプレイ)を利用した大規模なマーケティングをしていますが、そうした、われわれの技術の社会化をさらに深め、デジタルマーケティングに資するソリューションとしていくこともFCとの連携の中で考えられます。

近年、比較的大きなレガシー企業がIT企業を買収する話をよく聞きます。しかし、買収後のPMI(合併・買収をした後に、その統合効果を最大化するための統合プロセスのこと)がうまくいっているところは正直なところ、決して多くありません。
(このことについては大手会計ファームが書いた書籍の書評を書かせて頂いたのでこちらをご参照ください)PMI不調の主な理由は、やはり買収した側のテクノロジーの理解(これを私は最近「テック・リテラシー」と呼んでいます)が不足しており、買収された側の良い文化(その多くは「オープンソース」に纏わる精神)を潰してしまうことのように思っています。
WIも、特にここ5、6年ほどは買収や業務提携など多くのオファーを頂き、交渉してきました。しかし、なかなか条件が折り合わず、具体的に進展させられずにいました。
レガシーの企業と協力体制を築きたいという当社の考えは一貫しているものの、それをどのように現実化させるべきか、いい方法が見出せずに模索していました。
ちょうどその頃、外資系のピカピカのIT企業からいわゆる家業のレガシー企業に身を移した澤田もまた、同じような悩みを抱いていたのです。

<episode 3>へつづく・・・

<episode 1>学生時代に起業した仲間と20数年後、資本業務提携に至るまで

<episode 3>レガシー企業を引き継いで見えてきたIT化を進めるための課題と問題点
<episode 4>業務提携によって実現したいこと

≫株式会社ウェブインパクト資本提携と新取締役について(2018年12月)